キャリパーのピストンを揉み出そうとして整備動画を漁っていると、ベテランが決まって手に取る缶があります。無色透明の液体がプチプチと泡立つ、あの「メタルラバー」です。名前だけ聞くと金属磨きかゴム部品のように思えますが、中身はまったく別物でした。
結論から言うと、メタルラバーはブレーキやクラッチのシリンダーを組み付けるための「非鉱油系ラバー潤滑剤」です。ゴムやプラスチックを侵さずに金属を防錆・潤滑できるので、キャリパーピストンとピストンシールの間、フロントフォークのインナーチューブとダストシールの間といった、鉱物油系のケミカルを絶対に入れたくない場所で使えます。逆に、パッドやローターに付けてしまうと危険な一面もあります。
この記事では、メタルラバーの正体と成分、効果が出る具体的な場所、絶対に使ってはいけない場所、ラバーグリスやシリコングリスとの使い分け、そして揉み出しの手順とショップに頼んだときの工賃までまとめて整理します。SR400のような片押しキャリパーの旧車でも、対向4ポットのスポーツバイクでも、考え方は同じです。
・メタルラバーの正体は「ブレーキ用の非鉱油系ラバー潤滑剤」で、金属磨き剤ではない
・キャリパーピストン、フォークのダストシール、リアショックのダンパーロッドが主戦場
・パッド・ローターへの付着と、シリコン系ブレーキ液の車両はNG
・ラバーグリス・シリコングリス・パッドグリスとの役割の違いを価格つきで比較
メタルラバーとは何者か?整備動画で必ず名前が挙がる理由

正体は「非鉱油系ラバー潤滑剤」、ゴムを膨らませない設計
メタルラバーは、ブレーキ・クラッチシリンダーの組付液として作られた専用潤滑剤です。販売元のシーシーアイ(CCI)は、鉄やアルミニウムを含む各種金属の防錆および潤滑に効果を発揮し、ゴムやプラスチックを侵さず、ブレーキ液に溶解する、と説明しています。ここが要点で、一般的な潤滑スプレーの多くは鉱物油をベースにしているため、ブレーキ系のゴムシール(グリコール系フルード用のEPDMなど)に触れると膨潤させてしまいます。膨らんだピストンシールは戻り量が狂い、引きずりや固着の原因になります。メタルラバーはその鉱物油を使わないことで、ゴムに直接吹ける潤滑剤として成立しています。使う場面は、キャリパーを分解したときの組み付け、ピストンを揉み出すときの潤滑、フォークのオイルシールを組むときの当たり出しなど。デメリットは、ゴムに優しい代わりに油膜としての持続力はグリスに劣ることで、塗って永久に持つ類の物ではありません。
成分はポリグリコールエーテル、ブレーキ液に溶けるという発想
成分表示はポリグリコールエーテル、防錆剤、噴射剤です。ポリグリコールエーテルはグリコール系ブレーキフルードと同じ系統の物質で、だからこそ「ブレーキ液に溶解する」という性質が成り立ちます。キャリパー内部に残っても、フルードに溶け込んで悪さをしにくい。ここが、ブレーキの内側で使えるケミカルとしての決定的な条件です。逆にシリコングリスやリチウムグリスは溶けずに残るため、シリンダー内壁のような密閉部には向きません。使い方としては、ピストンの外周に直接スプレーし、キャリパーピストンプライヤーで回しながら全周に馴染ませるのが定番です。注意点は、無色透明でサラサラしているため、どこまで濡れたのかが見えにくいこと。吹きすぎるとキャリパーの隙間を伝ってパッド側に垂れるので、明るい場所で作業して、濡れた範囲を目で追いながら少量ずつ吹くのが安全です。
作っているのはブレーキ液のCCI、300mlで税込1,280円から
製造元のシーシーアイ株式会社は、ブレーキフルードやエンジンクーラントを手がけるメーカーで、公式サイトではブレーキ液ブランド「ゴールデンクルーザー」を掲げています(CCI 製品情報)。ブレーキ液そのものを作っている会社が、その液と相性の良い組付液を出している、という構図です。流通しているのは300mlのエアゾール1種類が中心で、価格は販売店によって開きがあります。アストロプロダクツでは税込1,705円(税抜1,550円)、工具通販のストレートでは税込1,280円、バイクブロス掲載の実売では1,575円、Webikeの整備記事では税込2,090円と紹介されていました。同じ300mlでも販売店によって価格の開きが大きいので、送料も含めて比べる価値があります。注意点は、消耗が速い使い方をしない限り1本で数年もつため、安さだけで大量に買う必要はないという点です。
名前で誤解されがち:金属磨きでもゴムパーツでもない
「メタルラバー」で検索すると、金属研磨剤やゴム素材のページが混ざって出てきます。これは名前が「メタル(金属)+ラバー(ゴム)」だからで、実際の意味は「金属とゴムが擦れ合う場所に使う潤滑剤」です。研磨剤成分は入っていないので、曇ったメッキを磨く用途にはまったく使えません。逆に、メッキ磨き用のコンパウンドをキャリパーピストンに使うと、シール当たり面に微細な傷を入れてフルード漏れを招きます。用途を取り違えると被害が大きいのがブレーキ周りのケミカルです。買う前に、缶に「ブレーキ用」「非鉱油系」と書かれているかを必ず確認してください。バイク用品店では防錆スプレーの棚に並んでいることが多く、ブレーキケミカルの棚にないこともあります。
| 商品名 | CCI メタルラバー MR20 |
| メーカー | シーシーアイ株式会社(CCI) |
| 価格帯 | 税込1,280円〜2,090円(販売店により変動) |
| 容量 | 300ml(エアゾール) |
| 成分 | ポリグリコールエーテル、防錆剤、噴射剤 |
| 特徴 | 非鉱油系でゴム・プラスチックを侵さず、ブレーキ液に溶解する |
効果が出るのはこの5か所|ブレーキだけの薬じゃない
キャリパーピストンとピストンシールの間が本命
最も効くのは、キャリパーピストンの外周です。ピストンはダストシールとピストンシールという2枚のゴムに挟まれて動いていて、ここにパッド粉と水分とフルードが混ざったカスが溜まると、動きが渋くなりレバータッチが悪化します。清掃後にメタルラバーを吹いておくと、ピストン表面の錆の発生を抑えつつ摺動抵抗が下がり、握った分だけ素直に動く感触が戻ります。ダストシール付きの公道用キャリパーでは、多くがピストンシールに届く前にダストシールで掻き落とされますが、ダストシールとピストンの間には潤滑成分が浸透します。使う場面は、パッド交換のついでの揉み出しと、キャリパーオーバーホール時の組み付け。注意点は、塗布量を欲張らないこと。表面に行き渡ったらウエスで軽く拭き取るくらいが適量で、残った液は走行中にパッド粉を吸着します。
フロントフォークのインナーチューブとダストシール
フォークのインナーチューブも相性の良い場所です。ダストシールの下に溜まった砂や汚れを取り除いたうえで、インナーチューブ表面に直接吹き、何度かストロークさせるとリップ面と摺動面に行き渡ります。フォークオイルシールは鉱物油であるフォークオイルを封じるためのゴムなので、非鉱油系でも問題なく使えます。効果としては、初期作動の渋さが取れて、段差を越えたときの角が丸くなる程度の変化です。街乗りやツーリングで「フォークが動いていない気がする」と感じたときに、オーバーホールの前に試す価値があります。ただし、これは油漏れの修理ではありません。オイルにじみが出ている個体はシールが痩せているので、根本的にはシール交換が必要です。ショップに依頼した場合、オイルシールとダストシールの交換工賃は10,000円〜14,000円が目安とされています(部品代は別)。潤滑で誤魔化して乗り続けると、漏れたオイルがブレーキローターに回るという最悪の展開になります。
リアショックのダンパーロッドとゴムブッシュ
リアショックのダンパーロッドにも使えます。ロッド表面を清掃してから薄く吹いておくと、シールとの当たりが滑らかになり、初期の突き上げがわずかに和らぎます。ロッドは常に外気にさらされていて、冬場の融雪剤や雨天走行で錆びやすい部位なので、防錆の意味でも定期的に拭いておく価値があります。使う場面は、洗車後にチェーンへ注油するついで。1シーズンに数回で十分です。注意点は、ロッドに傷や点錆が出ている場合、潤滑してもシールを削り続けるためオイル漏れが止まらないこと。にじみが出たらオーバーホールの検討時期です。専門店に出した場合の費用感は、こちらの記事でまとめています。

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燃料ホース・グロメット・プラグキャップの抜き差し
意外と重宝するのが、ゴム部品の抜き差しです。燃料ホースをニップルに差し込むとき、外装のゴムグロメットにボルトを通すとき、プラグキャップを抜くときにひと吹きすると、ゴムを傷めずに滑りが出ます。石鹸水やパーツクリーナーで代用する人もいますが、前者は錆を呼び、後者はゴムを痩せさせます。非鉱油系で防錆剤入りという性格は、こういう「1回だけ滑らせたい」場面にちょうど良いのです。シートカウルのグロメットが硬化して割れるのは旧車の定番トラブルなので、外す前にひと吹きしておくと余計な出費を防げます。注意点は、燃料ホース内部に大量に入れないこと。潤滑剤はあくまで外側の滑りを助ける目的で使います。
吹いた直後に白く泡立つのは異常ではありません。無色透明でプチプチと泡立つのがこの液の見た目の特徴で、泡が消えたあとに残る薄い膜が潤滑層になります。泡が消えないうちに拭き取ると、せっかくの膜まで持っていってしまいます。
使ってはいけない場所を先に覚える|1回のミスが命に関わる

パッドとローターに付けた瞬間、その日の走行は中止
絶対に避けたいのが、ブレーキパッドの摩擦面とローターへの付着です。潤滑剤が摩擦面に入ると制動力が落ち、しかも一度染み込んだパッドは洗っても元に戻りません。揉み出し中にピストンへ吹いた液が下に垂れ、ローターを伝ってパッドに回るというのが典型的な事故の流れです。作業するときは、必ずパッドを外し、ローターにウエスを掛けるか車体から外した状態で行ってください。万一付着したら、ローターはブレーキクリーナーで脱脂し、パッドは新品に交換するのが安全側の判断です。「少しだから大丈夫」と走り出して、下り坂で握った瞬間に効かないという事態は、想像するだけで背筋が寒くなります。
シリコン系ブレーキ液(DOT5)を使っている車両には使用できません。メーカーも「鉱油系・シリコン系ブレーキ液を使用しているブレーキ、クラッチには使用できません」と明記しています。国内の多くのバイクはグリコール系のDOT4指定ですが、輸入車やカスタム車で入れ替えている場合があるため、取扱説明書とマスターシリンダーのキャップ刻印を確認してください。
フルードの系統を間違えると、ゴムが一気に死ぬ
ブレーキフルードは、DOT3・DOT4・DOT5.1がグリコール系、DOT5がシリコン系に分かれます。この2つは混ぜると分離するため混用できず、対応するゴムシールの材質も違います。メタルラバーはグリコール系の系統に属するので、シリコン系フルードの車両に使うと、想定外の組み合わせでシールを傷める可能性があります。二輪では取扱説明書でDOT4を指定している車両が多く、メーカー指定が最優先です。フルード自体も、最低でも車検ごと(2年に1度)の交換が推奨されています。使う場面としては、フルード交換のタイミングでキャリパーを開けて、ついでに揉み出しと組付潤滑をまとめて済ませるのが効率的です。注意点は、缶を1本買ったからといって、どのバイクにも無条件で使えるわけではないということ。系統の確認だけは省略できません。
【失敗パターン1】吹きすぎてパッド粉を呼び、半年で真っ黒
ありがちな失敗が「たっぷり吹いておけば長持ちするはず」という発想です。実際には、ピストン周りに液が残るとパッド粉と砂を吸着し、研磨剤のようなペーストになってダストシールのリップを削ります。半年後にキャリパーを覗くと、ピストンの根元が真っ黒なヘドロで埋まっている、というのが典型的な結末です。原因は塗布量の過多、対策は「行き渡ったら拭く」の徹底です。ピストンを1周させて表面が濡れたら、ウエスで余分を拭き取り、薄い膜だけを残します。もうひとつの対策は、揉み出し後にピストンを押し戻す前に、キャリパー外側に垂れた液を必ず拭くこと。この2工程を足すだけで、次の点検時の汚れ方がはっきり変わります。
揉み出しの手順と、プロに頼んだときの工賃
用意する道具は4点だけ
必要なのは、ブレーキクリーナー、キャリパーピストンプライヤー、パッドセパレーター(またはウォーターポンププライヤー)、そしてメタルラバーです。ピストンプライヤーは、ピストンを傷つけずに回すための専用工具で、これがあると清掃の質が変わります。代用として布を巻いたプライヤーを使う人もいますが、ピストン表面に傷を入れるとシールを削るので、頻繁に整備するなら専用品を用意したいところです。使う場面は、パッド交換の前後と、冬眠明けの点検時。注意点は、ブレーキクリーナーの種類で、ゴムに攻撃性のある溶剤を選ぶとダストシールを痛めます。ブレーキパーツに悪影響を与えない製品を選び、ゴム部には直接大量に吹かないのが基本です。
5ステップの流れを頭に入れる
手順はシンプルです。①ブレーキパッドを外す、②ブレーキレバーを少しずつ握ってピストンを押し出す(落下防止のため出しすぎない)、③ピストンプライヤーで回しながらブラシとケミカルで全周の汚れを落とす、④メタルラバーを吹いてプライヤーで回して馴染ませ、余分を拭く、⑤パッドセパレーターでピストンをまっすぐ押し戻す。この⑤が地味に重要で、斜めに押し込むとピストンが齧って傷が入ります。作業時間は片側のキャリパーで30分程度。効果は、レバーを握ったときの初期の引っかかりが取れ、リリース時の戻りが軽くなる形で体感できます。注意点は、ピストンを押し出しすぎると抜けてフルードが噴き出すこと。左右のピストンを交互に、少しずつ動かすのが鉄則です。
自分でやるか、ショップに出すかの分岐点
工具を持っていない人や、ブレーキを触るのが不安な人は、迷わずショップに出してください。ラフ&ロードのピット工賃表では、キャリパーピストン清掃・揉み出しが1キャリパー1,100円〜、6ピストンのキャリパーでも1,650円〜、ブレーキパッド交換が1キャリパー2,200円〜となっています(ラフ&ロード 工賃表)。揉み出しだけなら、缶を1本買うのとほぼ同じ金額でプロに任せられる計算です。分解を伴うキャリパーオーバーホールになると、片押し1ピストンで8,800円〜、対向2ピストンで9,900円〜、対向4ピストンで11,000円〜、対向6ピストンで13,200円〜、マスターシリンダーのオーバーホールが9,900円〜と一段上がります。フルード交換はシングルディスクで2,750円〜、ダブルディスクで3,850円〜。判断基準は、シールを外すかどうかです。シールを触らない揉み出しまでは自分で、シール交換はプロに、という線引きが現実的です。
ワイヤーやレバーの注油とセットで考える
ブレーキ周りだけ滑らかにしても、クラッチワイヤーやレバーピボットが渋いままでは、操作系全体の印象は変わりません。ゴムシールにはメタルラバー、ワイヤー内部には専用の潤滑剤、金属同士のピボットにはグリスと、場所ごとに使い分けるのが正解です。年に1度、キャリパーの揉み出しとワイヤー注油を同じ日にやってしまうと、操作系がまとめて軽くなって走り出しの気分が違います。ワイヤー注油の道具と手順は、こちらでまとめています。

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メタルラバーとラバーグリスは何が違う?4製品を価格で比較
スプレーかペーストか、まず形状で用途が分かれる
同じ「ゴムに使える潤滑剤」でも、エアゾールとペーストでは向く作業が違います。メタルラバーは300mlのスプレーなので、組み立て済みのキャリパーやフォークに外側から吹く作業に強い。一方、ワコーズのラバーグリース RG-T(品番V241、100g)はペーストで、公式説明では「JIS規格をクリアしたブレーキ装置専用ゴムカップグリース」とされ、耐熱性・初期なじみ・耐ゴム性・潤滑性・耐金属腐食性・防錆性・低温性に優れるとあります(WAKO’S RG-T 製品ページ)。マスターシリンダーのカップやピストンシールを組む際に、指で塗り込む用途にはこちらが向きます。実勢価格は100gで1,837円程度と、容量あたりでは決して安くありません。使い分けの目安は、分解して組むならペースト、分解せずに手を入れるならスプレーです。
キタコのシリコーングリスは5g・税込506円という手軽さ
もっと小さく始めたいなら、キタコのシリコーングリス(品番0900-969-00130)が5gで税込506円(税抜460円)です。用途はゴムシール・バッテリーターミナル等で、低温から高温まで幅広く使える透明のシリコーン系グリスとされています(キタコ 製品ページ)。キャリパーのダストシールやパッドピンのゴムキャップに少量塗る程度なら、これで足ります。メリットは、使い切れるサイズで劣化前に消費できること。デメリットは、シリコングリスはフルードに溶けないため、シリンダー内部の組付液としては本来の用途から外れることです。外側のゴムパーツ保護はシリコングリス、フルードに触れる内側はメタルラバーやブレーキ専用ラバーグリス、と覚えておくと迷いません。
【失敗パターン2】パッドグリスをピストンに塗ってシールを痛める
整備箱に転がっている「ブレーキパッドグリス」を、名前の近さからピストンやシールに塗ってしまう失敗があります。キタコのブレーキパッドグリス(品番0900-969-00190、5g・税込528円)は、パッド裏面のシム両面に塗って共振を防ぐ鳴き止め剤で、成分は銅粉・二硫化モリブデン・鉱油・窒化ホウ酸・添加剤です(キタコ 製品ページ)。鉱油が入っている時点で、ゴムシールに使う物ではありません。原因は名前の似た製品を用途で区別していないこと、対策は缶やパッケージの「用途」欄を毎回読む習慣をつけることです。パッドグリスは鳴き止め、メタルラバーはシールの潤滑、と貼り紙をして工具箱を分けておくと事故が減ります。506円と528円という価格の近さも、取り違えを招く一因です。
バイク乗りのミーティング調べ:4製品を容量と価格で並べる
入手しやすい4製品を、容量・実勢価格・形状・主戦場で並べました。価格は公式ページと販売店表示から拾った税込価格で、時期により変動します。
| 比較項目 | CCI メタルラバー MR20 | ワコーズ ラバーグリース RG-T | キタコ シリコーングリス | キタコ ブレーキパッドグリス |
|---|---|---|---|---|
| 容量 | 300ml | 100g | 5g | 5g |
| 税込価格 | 1,280円〜2,090円 | 1,837円 | 506円 | 528円 |
| 形状 | エアゾール | ペースト | ペースト | ペースト |
| ベース | 非鉱油系 | 合成潤滑油 | シリコーン | 鉱油入り |
| 主戦場 | ピストン揉み出し・フォーク | カップ・シールの組み付け | 外側のゴム部品保護 | パッド裏の鳴き止め |
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 分解せずに外から吹ける ゴム・樹脂を侵さない ブレーキ液に溶けるので残留に強い フォークやショックにも流用できる | 300mlは個人には多く余りやすい 透明でどこに付いたか見えにくい グリスほど油膜が持続しない シリコン系フルード車では使えない |
買う前に知っておきたい容量・保管・価格差のカラクリ
300mlは個人には多い?使い切りの現実解
1回の揉み出しで使う量は、ほんの数プッシュです。前後キャリパーとフォークをまとめて手入れしても、缶の重さはほとんど変わりません。素直に言えば、個人ユースで300mlを短期間に使い切るのは難しく、数年がかりで消費することになります。そこで現実的なのは、フォークのインナーチューブやリアショックのロッド、ゴムグロメットの抜き差しといった周辺用途まで積極的に使い、缶を寝かせないことです。使い道を広げるほど1本あたりの価値が上がります。注意点は、噴射剤入りのエアゾールは長期保管で圧が抜けることがあるため、数年単位で放置するくらいなら仲間と共同で買って回す方が合理的だという点です。
消防法上は第4石油類・危険等級3に分類されます。直射日光や40℃以上の環境下での保存は避け、換気の良い場所で作業してください。真夏のガレージや、日の当たる窓際の棚に置きっぱなしにするのは避けたい保管方法です。
同じ300mlなのに販売店で価格が跳ねる理由
調べた範囲では、税込1,280円から2,090円まで開きがありました。同じ製品でこれだけ差が出るのは、工具通販・カー用品店・バイク用品店・整備記事の紹介価格と、流通経路がばらばらだからです。買い方の目安としては、他の消耗品と一緒に買って送料を吸収させるのが得策です。1本だけを単品で取り寄せると、送料で価格差が消えます。注意点は、極端に安い出品にまれに混じる旧包装や長期在庫品で、エアゾールは古いと噴射が弱くなります。製造からの年数が読めない出品は避け、回転の速い店で買うのが結果的に安上がりです。
実は「メタルラバー」は一般名詞ではなく製品名
意外と知られていないのですが、「メタルラバー」はゴム潤滑剤の一般名詞ではなく、CCIの製品名です。整備の現場で「メタルラバー吹いといて」と言われるのは、ホチキスやセロテープと同じで、製品名が作業名として定着した結果です。ここを理解していないと、通販で「メタルラバー」と検索して、まったく別ジャンルの金属研磨剤や工業用ゴム材料を買ってしまいます。ショップで探すときは「ブレーキ用の非鉱油系ラバー潤滑剤」と用途で伝えると、同等品を含めて案内してもらえます。逆に言えば、同じ役割の製品は他社からも出ているので、店頭で見つからなければ用途表示で選べば問題ありません。
缶を持たない人が代わりに使えるもの
どうしても缶を用意できない場面では、ゴムシールに使えるシリコン系グリスが選択肢になります。たとえば呉工業のシリコングリースメイトは、フッ素樹脂(PTFE)配合で-50℃から250℃までの温度域に対応し、ブレーキ周りやケーブルの潤滑、プラスチック・ゴム製パーツの保護に使えるとされています(呉工業 製品ページ)。内容量は180mlです。ただし、シリコングリスはフルードに溶けないため、あくまでダストシールの外側やパッドピンといった部位に留めるべきで、シリンダー内部の組付液の代わりにはなりません。過剰に塗ればパッド粉を呼ぶのも同じです。代用品を使う場合ほど、塗る場所と量を絞る意識が要ります。
あなたの乗り方ならどう使う?タイプ別の使いどころ
SR400のような片押しキャリパーの旧車乗り
ヤマハSR400は2001年モデル以降フロントがディスクブレーキで、2021年3月15日発売のFinal Edition(税込605,000円、Final Edition Limitedは748,000円)をもって生産を終えました(ヤマハ発動機 ニュースリリース)。つまり現存する個体はすべて中古で、年式によっては20年以上ブレーキを開けていない車両もあります。片押しキャリパーはピストンが1つで構造が単純なぶん、スライドピンとピストンの動きが渋くなると片減りが目立ちます。年1回の揉み出しに、ラフ&ロードの工賃表でいう1,100円〜相当の手間をかけるだけで、パッドの寿命とタッチが変わります。注意点は、旧い個体ほどダストシールが硬化していること。捲ったときに裂けるようなら、潤滑ではなくシール交換の時期です。

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通勤で毎日乗る人・冬眠明けの人
毎日乗る車両は距離が伸びる分パッド粉が溜まりやすく、雨天走行も避けられません。この使い方なら、パッド交換のたびに揉み出しを組み込むのが合理的です。逆に、冬の間ガレージで眠らせる人は、走らないことによる固着がリスクになります。ピストンは動かさない期間が長いほど、表面に浮いた錆がシールに食い込みます。春先の初回点検で、ダストシールを捲って清掃し、潤滑してから走り出すと、シーズン最初のツーリングでレバータッチに不安を残しません。注意点は、冬眠前にフルードを新しくしておくこと。グリコール系は吸湿するため、古いフルードのまま数か月置くと内部が錆びます。
対向4ポット以上のスポーツバイクに乗る人
対向ピストンのキャリパーは、ピストン数が増えるほど1つでも動きが渋いと片当たりが起きます。6ピストンのキャリパーは揉み出しの工賃も1,650円〜と上がりますが、それは手間が増えるからで、自分でやる場合も同じだけ丁寧さが要ります。ピストンを1本ずつ順番に出しては清掃・潤滑し、他のピストンが飛び出さないよう板や専用工具で押さえながら進めます。効果は、ブレーキの引きずり感が消えることと、コーナー進入でのコントロール性が素直になること。注意点は、オーバーホールになると対向4ピストンで11,000円〜、対向6ピストンで13,200円〜と費用が上がるため、そこに至る前の予防整備として揉み出しを回すのが結果的に安い、という点です。
自分では触らないと決めている人
ブレーキは、迷ったら触らないという判断も立派な選択です。その場合でも、ショップに「揉み出しもお願いします」と一言添えられるかどうかで、仕上がりは変わります。パッド交換2,200円〜に揉み出し1,100円〜を足しても、フルード交換2,750円〜と合わせて、1回の点検で収まる金額です。伝え方のコツは「ピストンの清掃と潤滑もお願いします」と具体的に頼むこと。効果は、次のパッド交換までのタッチの安定として返ってきます。注意点は、車検や点検のメニューに揉み出しが必ず含まれているとは限らないこと。含まれない店もあるので、見積もりの段階で確認しておくと行き違いがありません。
乗り方が違っても、やることは「ピストン周りを清掃して、ゴムを侵さない潤滑剤を薄く入れて、余分を拭く」の3つだけです。難しいのは手順ではなく、パッドとローターに付けない段取りの方です。
まとめ:ゴムに優しい1本を、正しい場所にだけ使う
整理すると、メタルラバーはCCIが作るブレーキ用の非鉱油系ラバー潤滑剤で、300mlのエアゾールが税込1,280円〜2,090円で流通しています。成分はポリグリコールエーテルと防錆剤で、ゴムやプラスチックを侵さず、ブレーキ液に溶ける性質を持ちます。この性質のおかげで、キャリパーピストンとシールの間、フロントフォークのインナーチューブとダストシールの間、リアショックのダンパーロッドといった、鉱物油系を入れたくない場所に使えます。一方で、パッドやローターへの付着と、シリコン系ブレーキ液(DOT5)の車両での使用は明確な禁止事項です。ラバーグリース RG-Tは分解して組むとき、キタコのシリコーングリスは外側のゴム部品、パッドグリスは鳴き止めと、役割が違う点も押さえておきたいところです。最初の一歩としては、次のパッド交換のときに「ピストンの清掃と潤滑もお願いします」と伝えるか、自分でやるならピストンプライヤーと缶を1本そろえて、前輪のキャリパー1つだけ試してみてください。レバーを握った瞬間の引っかかりが取れる感覚が分かれば、次からは点検のたびに手が伸びます。
※価格は調査時点の税込表示です。仕様・価格は変更される場合があるため、購入前に各メーカーの公式サイトでご確認ください。

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